J6yMsKXo8xm433tiR7fgc1o6UsYnf6Z4

「名作」とは呼ばれなくとも、時間を費やし魂に刻み込...

4.5

投稿 : 2022/03/12 02:03

状態 : 読み終わった

「名作」とは呼ばれなくとも、時間を費やし魂に刻み込むようにのめり込んだゲームの記憶がある人達へ

はっきりいってこのマンガは最初の頃はそんなに面白くない。
よくある量産型異世界転生/転移のちょっとかわったヤツぐらいに、見える(見えた)
ちょっとかわった、という部分は、転移先であるゲームがいわゆる名作というよりは尖った・知る人ぞ知る・一部で有名な・マニアックな・・・クソゲーに近いゲームというところ。
なにしろ未実装・バグ・開発者の怠慢・いかれた設定・とんでも仕様などがてんこ盛りというとんでもないゲームなのだ。ただ、これがただのクソゲーでないというのがポイントで、一定数の熱狂的なプレイヤー、数年にわたって寝食を惜しんでプレイするファン層がいる。
現実にもあるでしょう?そんなゲーム。
そんでそんなゲームにそんなプレイヤーが転移(※転生じゃない)したらどうなるかというマンガ。
転移してからの主人公の行動は、感覚的には、「ドラ○エⅢをスピードクリアするためにはファミコン本体をホットプレートで温めながらカセット何本も抜き差ししながらプレイするよね☆」って感じ(わかる人向け)

はっきりいって絵はうまくない・マンガの書き方はプロっぽくないので、それだけで初見さんは離れていくと思う。
また、ヒロインになりそうな女の子もいろいろと出てくるのだけれど、これも前述の絵やマンガのかかれっぷりの問題で、「かわいくなれそうなのにかわいくなりきれない」ということになっている。

正直、私も序盤から中盤にかけてのこのマンガの評価は2.5~3というところで、なんというか電子書籍セールでいろいろ買ったヤツの一つで、まぁ買ったからには読むかーという惰性でだらだら読み進めていた。

しかし、このマンガが秘められた・真の実力を発揮し出すのは巻を重ねてきてからだった。
前述の通り、このマンガの舞台となるゲーム世界では未実装・バグ・開発者の怠慢・いかれた設定・とんでも仕様によりとんでもない現象が発生し、主人公を苦しめたり逆に主人公はそれを逆手にとって攻略を進めていくわけだけど、実は、これらの「クソ現象」はマンガの原作者/作者が単純に考えなしにテキトーに配置していたわけではないということがだんだんとわかっていく。実に綿密な計算による伏線、まぁ伏せられているというよりはおおっぴらなのでギミックとでも呼んだ方がふさわしいかもしれない。この伏線/ギミックの絶妙な配置と時間をおいてのその開示は、類似するマンガとしては暗殺教室や進撃の巨人・ONE PIECEという言葉すら脳内をよぎったほど。とにかく、おばかなマンガの内容と裏腹に、原作執筆開始時点で完成していたのであろうその全体構成は高いものを見せつけてくる。

また、よくある異世界テンプレと同様、このマンガもヒロイン候補となり得るかわい(くなれそうでなりきれな)い女の子が複数出てくる。そして、主人公とこれらの女の子達とのいろいろなイベントがあるわけだがその流れのうまさや好感度の上げ方も見事。
このマンガの主人公は決して複数の女性を手込めにして上等のゲス野郎でも、女性から好感度を向けられても気がつかないような鈍感野郎でもない。普通に一人の女性を好きになり、大切にしたいと思うどこにでもいる恋愛観の持ち主である。だが、ストーリーの進展に応じ、彼は様々な女性と出会い、それぞれの理由で一緒に時を過ごし、そして親密になっていく。女性側からも主人公を好きになる理由には必然性があり、だが素直にカップル成立とはなれない事情も出てくる。主人公と複数女性との多層的な関連性、そこにはたしかに高い完成度の恋愛ストーリーとして描かれていくものがある。

さて、もし冒頭に述べたような想定読者が根気強く8巻まで読了するようなことがあれば、私が感じた感覚を味わえるかもしれない。ここまで来ると物語は世界全体を巻き込むような大きな潮流に飲み込まれているのだが、その中で主人公は一人大きな試練に立ち向かうのだが、そこでメタ的な内容として、
「そうだよな、わかるわかるぞ!ゲーマーだったらそれが嬉しくないわけがないよな!」「燃えないわけがないよな!」
私はここではじめてこのマンガにおいて主人公とシンクロし、大いなるカタルシスを得ることができたのだ。

さらに9巻まで来ると、物語は最終局面に向かって大きなうねりとなり加速していく。最序盤から張られていた複数の伏線/ギミックが見事に回収され、あますことなく生かされ主人公の目的を達成するために使われていく。この構成は見事といわざるを得ない。

おそらく残り1,2巻で完結するものと思われるが、どのようなフィナーレを迎えるのか、じつに楽しみとなっている。
序盤で読むのをやめなくてよかった。


あ、ちなみに、このマンガを読むのを勧めてるわけではないです。
だって、このマンガは、その中身が「プレイする人を選ぶゲーム世界」であるのと同様、「読む人を選ぶマンガ」であることは間違いないから。もう9巻も出ているのに絵のレベルとか全然上がってないし笑 まぁでも逆に今となってはこの絵じゃないとそぐわないという感じになってる笑
絶対に名作とか呼ばれないマンガ。クソマンガとは呼ばれるかも。
9巻まで読んで「やっぱりつまんねぇじゃないか!」とか言われても責任とれないっす。
というわけで、お勧めはしないので。もしそれでも読みたいというのであればあくまでも、

「名作」とは呼ばれなくとも、時間を費やし魂に刻み込むようにのめり込んだゲームの記憶がある人達へ

[追記]
※10巻まで全巻読了。素晴らしいフィナーレでした

※このレビューがネタバレしてると思ったら...?

サンキュー

1

このレビューは参考になりましたか?
『フォロー』ボタンを押すと、この人が新たにレビューを書いた時に、アナタのマイページに通知され、見逃す心配がなくなります。 マンガの趣味が合いそう、他のレビューも読みたいと思ったら、とりあえずフォローしてみましょう。

この世界がゲームだと俺だけが知っているの感想/評価はユーザーの主観的なご意見・ご感想です。利用規約を参考にあくまでも一つの参考としてご活用ください。
この世界がゲームだと俺だけが知っているの感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたらこちらのフォームよりお問い合わせください。

しるまりるさんが他の漫画に書いている感想/評価