『島耕作シリーズ』五作目。
病により社長職を辞任した勝木清春に変わり、島耕作と共に海外拠点を受け持っていた郡山利郎が社長に就任。
専務取締役だった郡山氏に変わり、島耕作が専務取締役に着任します。
常務から専務へとポジションが変わりますが、2つの役職の違いは重要視されず、タイトルが変わっただけで引き続きの展開です。
前作"常務~"同様、巻数は短く、実質、常務と専務は2つで一続きで、取締役から社長への過渡期のストーリーといえると思います。
中国、インドと担当してきた島耕作が、再びアメリカに渡る。
そこで、豊かな市場がある日本国内にばかり目を向けた戦略を行う国内メーカーと、早いうちから海外へ事業を展望している中韓のメーカーの考え方の違いを学ぶ。
世界各地を舞台にすることで、日本の電器メーカーもグローバルに目を向けた展望が必要だという考えを持つようになります。
後半では、ライバル会社の五洋電機が、韓国の電器メーカーソムサン電子より、M&Aを仕掛けられます。
五洋電機の技術が海外流出し、ソムサン電子がより巨大になると、初芝も世界と戦う前に勝負がついてしまうと考えた島耕作は、五洋電機のホワイトナイトとして名乗りを上げるという展開です。
上記が専務編での最大の山場となりますが、それ以外にも郡山社長がある登用によって失敗するなど、島耕作が社長になるための歯車が少しずつ動き出します。
個人的には勝木社長はいまいち影が薄いと感じていたのですが、最後、島耕作の背中を押す決定的な存在なるシーンでは涙腺がうるみました。
島耕作を支える人々、特に、大泉裕介、中沢喜一、万亀健太郎、そして勝木清春の歴代社長は、みんなおじさんなのにほんとに個性的で、良いキャラクターだと思います。
サラリーマンの指南書として上げられることが多い印象がありますが、おじさん好きの女性にもおすすめできる作品だと思いました。
本作でもある意味おなじみなアウトロー展開があり、下半身だけをピラニアに食わせて殺すなど、なにげに残酷な描写がありました。
一方でお色気展開は前作に引き続き少ない気がしました。無いでは無いのですが、ここまで上位になるとまた世界が違うのかもしれないです。
ちなみに、作中の社会情勢、技術レベルは現実とリンクしています。
そのため、私も今、後追いで一気読みしていますが、リアルタイムで読んだほうが面白い作品だと思います。
(2021年2月掲載の島耕作では、島耕作が新型コロナウイルスに感染した姿が描かれたのは有名な話ですね)
サンキュー
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