邦画で実写化されたので、そのコミカライズ企画だと思いますが、上下巻でまとまっていて、読みやすかったです。歴史事項や時代考証は正確だし、描写は柿崎先生の緻密な作画で、いつも通りのものすごい画面に仕上がっています。ネタバレになりますが、オチでフィルムがすり替えられていたのは、夫の妻への複雑な思いにもとれて、それを頑是なく思っている妻が最終画面の表情に見てとれ、いわゆる恋愛描写がほとんどなくても、夫婦間の愛情について考えさせられる作品になっています。こういう題材を執筆に取られたのは、よかったと思いました。

題材の戦前の日本軍の細菌部隊については、最近では報道があまりされていない事なので、風化させずにまた作品として若い世代に読みつがれていくのは、いい事だと思いました。出版社にこのような連載企画がまたあればいいと思います。