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妖怪もののバトル漫画、名作と呼ばれている作品です。...

5.0

投稿 : 2015/12/08 16:54

状態 : 読み終わった

妖怪もののバトル漫画、名作と呼ばれている作品です。

この作品の最大の魅力は、何と言っても王道の少年漫画的ストーリーであることです。
まず特徴なのが人と妖、異種族同士の典型的なバディものであること。主人公の中学生・潮と大妖とらが、出会った当初の最悪な関係から、最終的に唯一無二の相棒になっていきます。
異種族同士というのは基本的に価値観のぶつかり合いがあり、そこから互いに理解しあっていくことが最大の魅力だと思いますが、この作品もとらの「妖は人を食う」という価値観がその役割を担っています。同時にささいなカルチャーショックをコメディとして描写し、面白みを出しています。
主に相手を変えていく側の潮と変えられていく側のとらの変化が全編を通して描かれるので、この二人の関係が好きになれれば、最後まで問題なく楽しめるかなと思います。
かといって2人の関係に終始するわけではなく、戦いや旅を通して様々な人や妖と交流していき信頼を勝ち取っていくのも、最終的にこの2人を中心に全てが一丸となるのも、非常に少年漫画らしい展開です。

いずれも王道のストーリーなだけに、一見どこかで見た様な漫画と受け取られそうですが、作風に加え、魅力的なキャラクター、構図、シチュエーション等により、今でも名作と呼ばれる漫画になっていると思います。

シチュエーションに沿った画面作りが秀逸です。妖怪ものであることや作者の絵柄的に、絵作りはホラーテイストな部分もあるのですが、それをところどころで効果的に取り入れています。
ただそれが読者を怖がらせるためだけでなく、時には心情に沿って効果的に取り入れていることが特徴であり長所だと思います。特にキャラクターの喜怒哀楽の表情の巧みさから、読者は心情をキャラクターに沿わせやすくなっています。
大ゴマや見開きの絵の素晴らしい構図も特徴です。空中に浮かぶ鬼、月を背にするとら等、連載序盤から既にキャラクターやもの(オブジェクトといいますか)のバランスと配置は目を引くものがあるかと思います。
絵柄は古い、下手等と評されることもありますが、画面の描き込みやキャラの描き分けはしっかりとなされており、また序盤の妖怪の描き方はとらを含め絵巻物を手本にしたような描き方で、雰囲気と味わいがあります。
アクションシーンも勢いと迫力があり、濃い絵柄ですが流れがわかりやすく、優れていると思います。また、「見得を切る」とでも言いましょうか、引きなどの決めゴマのポージングは非常に格好いいものが多いです。
特徴的なのが話が進むにつれ、潮ととらの長髪を明らかに手間暇かけて非常に細かく描いていっている所。こだわりと思われますが、バトルシーンが非常に華やかになっています。もっともその分描く側の労力も凄まじそうですが…

前述の通り本筋は少年漫画らしく熱いストーリーと展開が基本です。
主だった流れに沿った形でおおよそ中篇(5~10話前後)程度のエピソードが多く、その間に1話完結の短編が入ってくることもあります。また、シリアスとコメディがはっきりしており、明快な印象です。
長編少年漫画としてはあからさまな引き延ばしは少なく、その分内容が濃いので読み甲斐があります。重い話もそれなりにあり、道徳的なメッセージが込められていることもしばしば。
少年漫画らしい男性キャラクターも多いですが、心情の描きかたについてはややウエットで繊細な部分もあります。話の上でも絵的にも感情を大切にしている印象があります。
そのせいか、少年漫画ではあるものの、小学生よりはやや年齢が上の層向けな感じもします。なかなかに怖い絵や話もあるため、小学生、特に低学年の子供には少し早いかもしれません。

キャラクターとしては主人公の潮が「自分を顧みず他人を助ける」タイプの主人公であり、好感の持てる主人公なのですが、割と度を過ぎて「いい子」なので、あまり感情移入はできないという人もいるようです。
ただ有限実行のキャラクターなので綺麗ごとが鼻につくことはまず無く、何かと背負い込んだり、終盤には欠点も描かれているので、ちゃんと人間的に描かれていると思います。他にも主要キャラから脇役まで、それぞれのキャラクターがそれぞれの意思を持って動いている印象です。
個人的には、女性キャラクターの魅力が、男性作家の描く少年漫画としては破格のものがあると感じます。女性キャラ自体が多く初っ端からダブルヒロインを投入してきて、それ以降も女性キャラクターは増え続けますが、キャラクター付けが上手く、性格をきちんと描き分けつつどの女の子にも自然な少女らしさ、女性らしさがあると思います。

最終決戦が人間、妖怪、ほぼ全てのキャラクター総出演で非常に壮大なのですが、ラスボスである「白面の者」がその壮大さに見合った巨躯と強さであり絵的にも十分表現されていること、
白面がそれまでのストーリー上で、巨悪であることが序盤から終盤まで全編通して十二分に描かれている事は、長編少年漫画として、あるいは最も評価すべき要素かも知れません。
だからこそ最終決戦には最高のカタルシスがあるのですが、ラストバトルに最高の盛り上がりを持ってくるというのは、特に長編の少年漫画にはとても難しいことだと思います。そこだけでも、この漫画には価値があるのではないかと思っています。

個人的に思い入れもあり☆5にしていますが、欠点がないわけではなく、絵柄も人を選ぶ部分はあると思います。が、機会があれば是非一読していただきたい漫画です。

サンキュー

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