
映像においては、視覚と聴覚に訴えかける寂寥感が秀逸であった「秒速5センチメートル」。
登場人物の心情を詳細にすべく刊行されたのが小説版(2作)およびこの漫画版であるが、本作は「秒速5センチメートル」の各キャラの心理描写への理解を深めるのに大いに役に立った。
貴樹のことを過ぎた過去として切り捨てたのではなく、現在の自分を形作るための想い出として胸の奥に大切にしまっていた明里。
美しすぎた初恋に縛られ、今の自分の在り方を認められないゆえに他人との間に距離を作ってしまっていた貴樹。
遠くの星に憧れるかのような片想いのままで初恋が破れたのち、大人となって今の環境に自信を持てなくなってしまった花苗。
映画本編では心の距離を嘆いていた理沙が、今作では貴樹との破局と引き換えに彼の生き方を改めるきっかけを作っていたり、花苗も男友達や姉の助言で東京へ行き、憧れに必要以上の距離を感じる必要はなく今ある環境を大切に生きればいいと思い至る。
貴樹と花苗もまた、明里の様に「今を生きられる」きっかけをこの漫画の中では得ることが出来ている。
踏切で明里とすれ違った後の公園で、それぞれが「たどり着く」ことが出来た状態での貴樹と花苗の再会。
その再会が恋愛に発展するにせよしないにせよ、2人にとって実りあるものであることを期待したいものである。
サンキュー
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