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《津雲(つくも)むつみ氏という女性マンガ家を御存じ...

4.5

投稿 : 2017/03/11 21:20

状態 : 読み終わった

《津雲(つくも)むつみ氏という女性マンガ家を御存じですか?マンガ文庫『ジャカランダ・ロード』から。》

正直なところ、このタイトル失礼と言えば、この上なく失礼ですよねェ~!
少なくとも、男女の恋愛TVドラマを良く見る方や、女性マンガ〈今は無き、「YOU」とか「Judy」、健在なのは「BE・LOVE」でしょうか?〉の大御所と言えるマンガ家で、何よりもこの分野のパイオニアにして、数々の名作や問題作を世に問うた、集英社の「セブンティーン」で、創刊当初から活躍されたまさに《女性マンガの旗手》と、言えるでしょう。

〈詳細:拙ブログ記事参照〉
→http://aonow.blog.fc2.com/blog-entry-952.html

主人公はその自然の中で動物達を撮影したいという、趣味の大学生カメラマンとして、登場します。
ただ、彼の父親も有名な自然動物カメラマンでしたが、このケニアで突然の発作で倒れ、救急隊が駆け付けた時には、既に亡くなっていたという背景があります。その為、彼の母親は息子の写真好きやケニヤ行きには、大反対でケニアどころか、アフリカ大陸全体さえ嫌っているという状態です。
ただ、同居している父親の両親つまり主人公の祖父母は、息子がそうだったように、孫も同じような趣味嗜好を持つ事に、複雑な思いはあるものの息子の意志を継いでくれたという、嬉しさも有るように描かれています。

そして主人公は、ケニアで父親の親友だったという、ケニア人の夫と日本人の妻という夫婦の、思いもよらない歓待を受けて面食らいます。
さらに彼を驚かせたのが、その夫婦の一人娘で外見的には、まったく日本人の血縁を感じさせない黒人として描かれた娘です。肌はまさに黒人ですが、髪の毛や顔立ちは日本人的で、結果的に非常にスタイルも良い、ある種理想的な女性として、容姿端麗眉目秀麗才色兼備、但し黒人!という、描かれ方をしています(この手の御都合主義は、マンガの特権と言えるでしょう!)。
しかも、その家は祖父の代にコーヒー豆の大農園として成功した大富豪で、父は外交官として日本人の妻と共に世界を飛び回っているという、羨ましい家族です。ただ1つ残念な事は、その日本人の母親は両親。特に父親(娘から見れば祖父)が勧めた見合い相手を断り、黒人男性と結婚した為に一人娘を勘当して以後、二度と娘とも孫とも会おうとはしない事です。

孫に当たる娘もまた、1度だけ母に連れられて訪れた日本で、黒人で有るが故に晒される好奇の目と、自分を孫と認めようともしない祖父の、傲慢な態度にすっかり日本嫌いになっていました。
それまで母親に、日本と日本人の良さだけを知らされていた娘は、期待が大きかっただけに失望も大きく、以後「日本も日本人も大嫌い!」になったと言います。しかし、共にサファリ(ここでは自然と動物の観光旅行の事で、主人公は撮影目的の為にツアーから離れて父親の友人夫婦が娘をガイドに、個人的に運転手と車を貸してくれました!(さすが、金持ち!!)に出掛け、広大な自然とその中で生きる動物達の姿、それらを追う内に付き添ってくれた娘に、好意以上の感情を抱くのはお約束でしょう?

しかし、同時に同じツアーで同宿となった日本人男性(どう見ても田中角栄元首相がモデル!)が、酔った勢いでこの娘に売春(もともとアフリカ人女性とのそれが目的だったようです)を強要し、逆にコーヒーを浴びせられながら、「日本人は日本に帰れ!」と罵倒されます。
アフリカという大地、ケニアという母国に誇りを持つ彼女には、肌の色だけで相手を見くびる日本人の態度が、我慢できなかった!のは、当然です。

主人公もまた、未だに「夫(主人公の父親)を奪ったのはアフリカ!日本なら助かったのに!!」という、逆恨みと知りながらも呪い続ける母親がいるだけに、人種や国の違いを改めて思い知らされます。
翌朝、昨晩の罵声が勢いの結果とはいえ、他の日本人ツアー客には何の落ち度もなく、失礼に当たった事を素直に詫びる彼女に、主人公はもちろん他の客達も特に女性陣が、「女を買うとしか考えていない男には、コーヒーでも何でも掛けてやれば良い!」と、むしろ日本人としての非礼を詫びます。
彼女は、その優しさに思わず涙ぐんでしまいすが、同時に主人公は完全に彼女に参ってしまいます!
まァ、当然で・・・どちらかと言うと、何で彼女がこの主人公を!?と言う方が妥当なのですが、それは言わない約束でしょう。

既にお解りと思いますが、この作品は短編でありながら、当時の日本や日本人の問題。
意識的無意識的な、人種や外国への差別感。さらには、男女差別自体の問題と、多くの問題を投げ掛け見事に、一話で終息させて行きます。しかも、その作品が長編の穴埋め的に扱われると言う、この現実の凄さ!

〈続きも同上〉
→http://aonow.blog.fc2.com/blog-entry-952.html

サンキュー

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