VGFWTrOi1gjWbyfSPEIl4b5zF7vtrMKG

はじめて読んだのは中学生の時です。手塚治虫という「...

5.0

投稿 : 2020/10/11 21:46

状態 : 読み終わった

はじめて読んだのは中学生の時です。手塚治虫という「漫画家」の方がいて、アニメとは別に漫画を描いているとわかった時期でした。世間知らずだったですから、アニメと漫画作品が別という事も知りませんでした。そして、なんとなく小学一年生の時、友達の家のテレビでかかっていた白黒アニメ作品だったのだなと思いました。それはちらっとしか見ていませんでしたから、虫プロアニメのをちゃんと見たのは大学生の時になります。どろろというのはそういう作品でしたが、当時「火の鳥」などと一緒に読んで、その文学性や精神性に深く感動を覚えました。特に百鬼丸の設定にはしびれました。手塚先生自身が海外ファンがいたという話をあとがきで書いておられますが、本当にそれだけの作品だと思います。父にうとんじられ体が不具になってしまう設定は、神話的でありながら民話のような語り口で、手塚先生の民話調の「ライオンブックスシリーズ」とも通じるものです。普遍的だと思います。それがあの丸い、とがったところのない線で語られていく。出てくる物語は人が差別されたりいじめられたりする話です。子供心にもびんびん響きました。その物語には安らぎがありました。何度でも繰り返して聞きたい、おとぎ話の世界でした。しかし語られている話はおとぎ話よりもシビアなものでした。それが手塚先生の漫画でした。

この作品は連載当時、差別用語問題でやり玉にあがっていました。その事については、最近どろろの同人誌で詳しく経緯を知りました。60年代当時はまだ子供でしたから、私はまったく知りませんでした。その頃私にできた事は、高校の図書室で、昔の新聞の縮小版で、テレビ放映時の番組表などを眺めることぐらいでした。大学の時神戸にあったアニメファンクラブに入りましたが、特に活動をするでもなく、幽霊会員でした。その後何年もたってから実写版が作られ、再アニメ化もされました。しかし私にとってどろろとは、やはりこの最初の手塚先生の漫画のことになります。途中で連載が終わっていても、やはりどろろも百鬼丸も、手塚さんが造形したものが一番好きなのです。中学時代、どれほどこの漫画のネームに勇気づけられたかわかりません。最近このサムネイルの版のコミック本を買い戻しました。今でも当時に近い装丁で出版してくださっている出版社には、感謝しかないと思います。いくつか版を重ねた本書ですが、中学当時の本を今読むことのできる幸せを思うのです。差別用語問題で、連載時とはネームは改変されているのではありますが。

※このレビューがネタバレしてると思ったら...?

サンキュー

1

このレビューは参考になりましたか?
『フォロー』ボタンを押すと、この人が新たにレビューを書いた時に、アナタのマイページに通知され、見逃す心配がなくなります。 マンガの趣味が合いそう、他のレビューも読みたいと思ったら、とりあえずフォローしてみましょう。

どろろの感想/評価はユーザーの主観的なご意見・ご感想です。利用規約を参考にあくまでも一つの参考としてご活用ください。
どろろの感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたらこちらのフォームよりお問い合わせください。

栞織さんが他の漫画に書いている感想/評価