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藤子・F・不二雄の異色SF短編集3巻。 1,2巻...

4.0

投稿 : 2017/10/08 00:08

状態 : 読み終わった

藤子・F・不二雄の異色SF短編集3巻。
1,2巻同様ブラックな作品集となっています。

全2作同様、個人的に好きな作品についてピックアップし、レビューします。

<どことなくなんとなく>
白い夜があり、永劫のときが流れて過ぎた夢を見た主人公は、その夜を境として、今いる世界にどことなくなんとなく違和感を覚え始めるという話。
いわゆるシミュレーション仮説について描かれた作品で、思考実験好きには垂涎モノの作品です。
実際にこの違和感を感じたら、オッカムの剃刀を振るうべきなのか、大変哲学的な示唆に富んだ話だと思いました。

<カンビュセスの籤>
こちらも哲学的な作品。思考実験というより、人が生きる意味について考えさせられる作品です。
紀元前500年以前、ヌビアの黄金を奪わんとするカンビュセスの軍勢は、全行程の4分の1も進まないうちに食料が尽き飢えていた。
ある理由より軍勢から抜け出した主人公は霧の谷を越えて砂漠を彷徨い、不思議な建造物の中に迷い込む。
そのにいた少女に食料を分け与えられ、どうにか飢えより脱したが、実は、今食べた肉の正体は。。という話。
アニメ化もされていて、そちらは救いのあるラストになっているそうですが、漫画版はどうとも言えない終わり方になっています。

<ノスタル爺>
感動作です。客観的に見てハッピーエンドではないと思うのですが、ラストの主人公の心情を考えると思わず涙腺が緩みました。
戦争が終わって30数年経て漸く国に帰った主人公は、ダムに沈んだ郷里へ妻の墓参りに来る。
戦死公報が来たにも関わらず婿を取らずに早死した妻に、主人公は自責の念にかられている。
藤子・F・不二雄のSF短編には、パラレルワールドや未来、あるいは過去に迷い込む話が多くあって、本作もその一つなのですが、本作は思いもかけず本当に主人公が望んでいた世界に行けた喜びが伝わってくる名作だと思います。

<あのバカは荒野をめざす>
本作も感動系です。あるホームレスが、馬鹿だった自分をなんとか押しとどめようとする話。
2巻にあった<分岐点>もやり直す話ですが、本作はただ変えるのではなく、過去の自分から今を見つめ直す話です。
そして本作も「あの時こうしてれば」が叶う話なのですが、その選択をしたのは、自分であるということを教えられる作品だと感じました。

※このレビューがネタバレしてると思ったら...?

サンキュー

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